【カフェ・万年筆・線香花火】という3つのリクエストキーワードで作った自作小説

文章関係
ありがたいことに再びツイッターでお題を頂いたので、小説を書いてみました。
いろは@ブログ2ヶ月さん @simple_168 さんからのリクエストの

【カフェ 万年筆 線香花火】

というキーワード。

宜しければご覧下さい。

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時を超えたプレゼント

久々にここに来た。

周囲を山に囲まれた田舎町。

私の祖父の生まれ育った場所。

前に来た時から5年は経っただろうか。

都内とは違って、空気が澄んでいるように感じられる。

やっぱりなんか癒されるなぁ……。

駅前は以前来た時とは様子が違っている。

開発が進みお店や施設が増えているようだ。

懐かしさと寂しさを感じながら、私は歩き出した。

祖父は約7年前、この地で亡くなった。

持病の悪化が原因。

最後の方は認知症になってしまい、その言動に対してイライラして強く当たってしまうこともあった。

そしてそれを謝る前に祖父は逝ってしまった。

今になっても後悔していることだ。

三回忌を済ませてからは、こっちには来られていなかった。

私は都内で働いているのだが毎日忙しく、休みの日も寝ているとあっという間に終わってしまう。

そんな日々を過ごしている。

今回、出張で丁度こちら方面に来る機会があったので、そこから少し足を延ばして久々に祖父の墓参りに来たという訳だ。

スーツケースを引きながら、住宅街へと入って行った。

この通りも良く走り回ってたなぁ。と懐かしみながら歩いていると、ふと1軒の店が目に留まった。

カフェだ。

年季を感じさせる外観である。

来たことあったっけ? あったような……?

小腹も空いていたので、入店してみることにした。

扉を開けるとカラカラと心地よい音のベルが鳴り、店主がやって来た。

「いらっしゃいませ」

白い口髭を蓄えた、見た感じではご高齢の男性だ。

おそらく店主だ。

だが、背筋はピンとしており、綺麗にセットされた白髪も相まって気品を感じられた。

ガラガラとスーツケースを引きながら、案内された席へと向かう。

「こちらメニューでございます」

と言い残して、店主はカウンターへと戻って行った。

店内は優しい明りが照らす、木目調で落ち着いた雰囲気。

客も数人いる。

私はメニューを見て、チキンのサンドイッチとコーヒーを注文した。

「ふうっ」

出張の仕事も終わって後は帰るだけだし、やっと一息付けた気がする。

カフェには普段からリフレッシュがてら行くのだが、この店はどこか懐かしい印象を感じた。

やっぱり来たことあるのかな? もしそうだとしてもかなり幼かった時だろう。

そんな考えことをしていると、注文したものが運ばれてきた。

分厚いチキンが程よい辛みのマスタードで味付けされたサンドイッチ。

苦みが強くほんのりと酸味も感じる、後味の良いコーヒー。

お腹が空いていたこともあってあっという間に平らげてしまった。

「ごちそうさまでした」

小さくそう言うと、お会計を済ませるために私はカウンターへと向かった。

代金を支払い立ち去ろうとした時、ふととある文字が目に入った。

『交換の箱』

カウンターの隅に置かれた大きめの木製の箱に、そう書かれた紙が張られている。

これはなんだろう。

と疑問に思っていると、店主が悟ったのか語りかけてきた。

「それは物々交換の箱です。不要になって誰かに使ってもらいたい物など、どんなものでもお入れください。代わりに、こちらにある物と交換が出来ます」

そういって指さしたのは、店主の背後の棚だった。

そこには数々の品物が並んでいる。

茶碗のようなものや、懐中時計、ぬいぐるみまで、色々な物がある。

よく見ると1つ1つには名前の書かれた札が付いていた。

そのことを店主に聞くと、この物々交換のシステムが分かった。

不要な物を箱に入れる際に、自分の名前を書いた札を付けて一緒に入れる。

そうするとそれが棚に飾られる。

その物を見て欲しいと思った他の誰かが、自分の不要な物を『交換の箱』に入れることで、目当ての物を持って帰れるといったシステムだ。

面白いなぁと思っていると、店主に声をかけられた。

「もしかして、小峰 玲様ですか?」

突然名前を呼ばれたことに驚きつつも、私は「え、はい」と答えた。

「やっぱりそうでしたか。面影が残っていたもので」

話を聞くと、どうやら私の祖父とは長い付き合いだったらしく、私は祖父に連れられてこの店にも何度か来たことがあったらしい。

「実はですね、預かり物がありまして」

店主がカウンターの下から取り出したのは、木箱だった。

ふたを開けると、そこには万年筆が入っていた。

「それは玲様のおじい様から預かっていたものでございます。玲様がこの『交換の箱』に入れた物をおじい様が交換して行ったのです。いつか大人になった孫娘が来たら渡してくれと言われていました」

万年筆を手に取ると、そこには文字が刻まれていた。

私の名前だ。

ふと疑問が浮かんだ。

私は交換の箱に何を入れたんだろう。

店主に聞いてみると、答えは意外なものだった。

「2本の線香花火です」

え? 線香花火? しかも2本。

「その時のことを私は覚えているのですが、お二人は河原で花火をし、その帰りにこの店に寄られた。お帰りになる際に、玲様はこの箱に余っていた線香花火を入れて行かれたのです」

「そんな余り物なんて誰も欲しがらないですよね」

そう言って私は苦笑した。

線香花火を誰も交換してくれないだろうと思って、可哀そうだという思いからこの万年筆を用意してくれたのだろうか。

その心遣いが嬉しかった。

だけれどもう、直接お礼は言えない。

ずるいよ……こんなの……。

「おじいちゃん、ごめんね……ありがとう」

私は涙ながらにそう呟いた。

大事に使うから。

おじいちゃんに届くように、想いが伝わるように、心で強く念じながら、私は万年筆を握りしめた。

 

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