【自作小説】その存在が消える時

自作小説

突然見知らぬ空間で目が覚めた主人公。

目の前には天使が立っており「あなたは死にました!」と言われてしまい……。

ギャグ要素を入れた短編小説です!

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その存在が消える時

一体この状況はなんだ。

というかここはどこだ。

現在俺の目の前には、背中から真っ白な羽を生やした少女が立っている。

ショートカットの髪は透き通るような銀色。

天……使? なのだろうかと漠然と考えていた。

「……」

辺りを見渡してみると遥か前方に建物群が小さく見えるだけで他には特に何もなく、白い大地が広がっている。

そして頭上には雲一つない青空。

どこか幻想的な雰囲気を感じる空間だ。

ここで俺は、目の前に立っている少女にこの場所について質問してみることにした。

「えーと、ここどこですか? で、あなたは?」

天使みたいな姿をした少女は形の良い眉をひそめ、ハキハキとした口調で言い放った。

「ここは天界です! それでもって、あたしは天使のミーチェと言います!」

「……」

このちびっこは何を言っているのだろう。

死後に行くっていうあの『天界』?

いや、まさかありえない。

羽が生えている姿からすると、ミーチェとか言うこの少女が天使というのも納得出来るような……。

って、俺は何を考えてるんだ!

実際、現実にいる訳ないじゃないか。

はっ、そうか! これは夢……。

「あなたは死にましたっ!」

薄っぺらい胸を張ってふんぞり返る、ちびっこな自称天使。

なんでこいつはこんなに偉そうなのだろうか。

「突然ですみませんが、一緒に来て下さい」

ミーチェは俺をどこかに連れて行こうと、唐突に手首を掴んで引っ張って行こうとしてきた。

「ちょっ……」

相手が何者かはっきり信用できない今、素直に従う訳にもいかず、俺は掴んできた手を振り払った。

「おいおい、ちょっと待て! 『天使』とか『天界』とか『死んだ』とか一体どういうことだ」

一気に捲し立てたのが悪かったのだろうか。ぷくっと頬を膨らまし睨んできた。

もともとが可愛らしい顔だから別に怖くはないけど。

「ぐだぐだうるさいですねぇ。あなたは死んだのですよ」

「は?」

一体さっきから何言ってるんだよ!? 夢なら早く覚めてくれ!

「口で説明するより直接真実を見せた方が早いですね。とにかく一緒に来て下さい」

ミーチェは再び俺の手首を掴むと、背中の羽を使って飛び上がった。

ふわりとした浮遊感と同時に、かなりの速度で俺の体は流されて行く。

(飛んでる!?)
少女の小さな体のどこにこんな力が!? 俺はどうなる!?

などといった言葉が脳内に浮かんでは消えて行く。

「二十分程で着くのでこのまま大人しくしていて下さいね。まぁ、もし地面に落ちたとしても、もうあなたは死んでいるので強烈な痛みを感じるだけで死ぬことはありませんが」

「さらりと不気味なこと言ってんじゃねぇよっ!」

あ……目から何か熱いものが溢れて止まらない。

ここで今ミーチェに抵抗してもロクな結果が待っていなさそうなので、色々不安だが取り敢えず大

人しくするしかないようだ。

嗚呼、風が心地良い……。

 

 

「着きました」
ぶっきらぼうにミーチェはそう言った。
目の前には真っ白な壁の建物。

見た所、八階建てのビルぐらいの高さがあるだろうか。

あれからしばらく飛ばされて、高層ビル群の所に下ろされた。

周囲には、ミーチェと同じく背から羽を生やした天使達が歩いている。

ピシッとしたスーツを着ている者や、ラフな服装の若者らしき者まで様々な格好をしている。

天界ってこんなにも都会的な匂いが溢れているんだと感心したり、若干のショックを受けたり。

辺りの景色に見とれていると、突然目の前の建物のガラス扉が自動で開いた。

ミーチェの後について俺も入って行く。

床はピカピカの大理石で、壁には天使が描かれた絵画が飾ってある。

受付のようなものがあり、そこでミーチェは書類のようなものに記入をしていた。

「お待たせしました。では行きましょう」

一直線に伸びた長い廊下を進んで行くと、やがてミーチェが立ち止まった。

「ここです」

二スが塗られているのか、てかてかと上品な輝きを放つ木製の扉がそこにあった。

先導され入って行くと、室内には驚くべき光景が広がっていた。

「な……」

百人以上いるだろうか。

長机が何列も並び、その上に置かれたデスクトップパソコンに向かって一心不乱にキーボードを打つ天使達。

その光景はシュールであり、あまりのギャップに怖くもあったり。

扉の近くの席に座っていた何人かは、俺達の方に視線を向けると何を言うでもなく、またすぐ作業に戻ってしまった。

「ちょっと見て欲しいものがあるのですが……」

ミーチェは部屋の中へと進んで行き、一つだけぽっかりと席の空いたパソコンの前へと行くと、マウスを操作し始めた。

天使達の羽にぶつからないように気を付けながら、俺も進んで行く。

「何を見ろって?」
やっとたどり着くと、ミーチェが操作する画面を覗き込んだ。

そこにはポインタの矢印がくるくると回り、ある一点を示していた。

「なになに……。『井口翔 死亡』」

俺、死亡?

「分かりましたか? あなたは死んだのです」

「は!?」

あまりにも酷すぎる。悪夢なら早く覚めてくれ!

「落ちついて聞いて下さい。正直言いますと、あたしが殺してしまったんです」

「なん……だと?」

「ひうっ!?」

我ながらドスの利いた声が思わず出てしまった。

あぁ、だんだん頭が痛くなってきた。

「あ……あの……、これは現実です。夢じゃないです」

涙目でおどおどしながらそう言ってきた。

「その証拠はあんのか?」

ここでミーチェは何を思ったか突然、平手打ちをしてきた。

「もふっ!!」

叩かれた頬がじんじんと痛む。と言うことは。

「どうです、分かりましたか? 自分の今の状況をはっきり理解したのなら、私の話をちゃんと聞いて下さい」

だから、どうしてこいつはこんなに偉そうなんだ。さっき俺を殺したとか言ってたよな?

「非常に言いにくいんですが、あなたが死んだのは私のミスなんです」

「ミス?」

まだ多少痛む頬をさすりながら聞き返した。

「はい。私達天使は人間の命を管理しているんです。その作業中のミスが原因でして」

「……」

「この場にあるコンピューターには、人間が寿命を迎えたら、誰が亡くなったかという詳細が書かれたメールが送られてくるんです」

「……」

「私達の役目は、メールに記載されている方の『死亡登録』なんです」

「それはどういう?」

「寿命を迎えると、勿論その存在はやがて地球上から消えてしまいます。ですがそれだけでは完全に死亡と言うことにはなりません」
真剣な表情でそこまで言うと、ミーチェは再びパソコンへと向かった。

カチカチと操作し現れた画面には、大きく『死亡登録』と書かれたボタンが表示されていた。

「このボタンを押すと、魂が導かれてこの天界に送られてくるんですよ」

「そんな仕組みになってんのか」
さか俺達の命がパソコンで管理されているとは。IT社会の波はここまで広がっていたのか。

「それでですね、メールに記載された人の詳細ページをデータ管理されている名簿から探すのですが、その際に間違った人のページを開いてしまって、ボタンを押してしまったんです。その時は眠かったものでページの詳細を確認せずに……」

「ちょっと待てぃーー!!」

周りにいた天使達は一斉に肩をびくっと震わせた。それに応じて数枚の白い羽がはらはらと舞った。

「つまりこうか。お前の職務怠慢で俺が死んだと」

「すみません……」

随分としょげた様子でそう言ってきた。

出会った当初の強気さは、今は微塵も感じられない。

「ただ単にボタン押し間違えたくらいで簡単に死んじまう位、俺達はモロイ存在なのか?」

「『死亡登録』ボタンを押すということは、その人が死亡したという証明を確定するものです。もし本当は生きているのに間違って押してしまったとしても、その人の命は消えてしまいます」

どうやら俺は本当に、雲の上の存在となってしまったらしい。

こんなにも唐突に人生が終わるとは。あっけなさすぎるだろ。

「ふざけんなぁぁぁーー!!」

今度の怒号で部屋中の天使達がびくっとし、大量の羽が舞った。

「落ちついて下さい! まだ助かる可能性はあります」

「おまえがそれを言うか」

「すみません……。でも本当なんです。神様に直接頼めばどうにかなるかもしれません」

「ならすぐに連れて行ってくれ。ん? でも俺の身体は今頃もう、燃やされて灰になってんじゃないのか? なのに蘇るなんて出来るのか」

「全知全能の神様だから大丈夫じゃないですかね。たぶん」

こいつの発言はいまいち信用出来ないな。

「もし蘇ったとしても、家族とかびっくりするだろうが。その辺はどうなんだ?」

「まぁ、そこは記憶をちょちょいと操作しちゃえばいいんじゃないですかね。たぶん」

「神様ってのはそんな都合良く人間の記憶をいじくってんのか?」

「…………それより今はとにかく急ぎましょうか!」

「おい! 今の間は何だよ!?」

早くもミーチェは出口へと向かって駆け出していた。

渋々俺も後を追う。

扉を開け廊下に出た時、ミーチェが「あ」と小さく呟いた。

「俺の感が外れていなければ、何故か嫌な予感がするんだが?」

振り返ったミーチェの顔からは血の気が引いており、唇は青くなっていた。

「今思い出しました。非常に申し上げにくいのですが神様は今、深い眠りについていまして、次にお目覚めになるのは恐らく50年後です……。なにせ歳が歳ですので……」

「なんだとぉーー!?」

あっ……、頬に何か熱いものが伝っている。

やばい、溢れて溢れて止まらない。

ねぇ、神様。俺どうなるのですか……。

 

 

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